それは、寝ぼけ眼で始まった、いつもと変わらないはずの朝でした。顔を洗い、溜まった水を流そうと蛇口の根元にあるレバーをクイッと引き上げた瞬間、妙な手応えのなさに気づきました。奈良では水漏れ修理に配管交換した普段なら「カチッ」という小気味よい感触と共にスッと上がるはずの排水栓が、まるで頑固な岩のように沈黙を貫いているのです。レバーは虚しく上下するだけで、洗面ボウルには水が溜まる一方。時計を見れば、家を出るまであとわずか。私の朝の穏やかな時間は、この小さな金属の反乱によって、一瞬にしてパニックへと変わりました。 「なんで!?」と声に出しながら、私は躍起になってレバーを何度も激しく動かしました。しかし、栓は微動だにしません。こうなれば力ずくだ、と栓のフチに爪をかけ、こじ開けようと試みましたが、滑るだけで全く歯が立ちませんでした。トイレ専門チームが水漏れを和束町に配管交換しては頭の中では「業者を呼ぶべきか」「修理代はいくらだろう」「今日の予定はどうしよう」という思考が渦を巻き、ただただ焦りだけが募っていきます。その場は一旦、洗面器で水を汲み出してしのぎましたが、一日中、私の心には鉛のように重い栓が居座り続けていました。 帰宅後、私は本格的な「救出作戦」を開始することにしました。スマートフォンで「洗面所 栓 上がらない」と検索すると、出るわ出るわ、無数の解決策。まずは最も簡単そうな「栓のキャップ清掃」から試すことに。排水栓の丸いキャップを指で押さえながら、恐る恐る反時計回りに回してみると、いとも簡単に外れました。そして、その裏側を見て私は絶句しました。そこには、長い年月をかけて蓄積されたであろう髪の毛と、黒いヘドロ状の汚れが、まるで異世界の生き物のように絡みついていたのです。思わず顔をしかめながらも、使い古しの歯ブラシでゴシゴシと洗い流すと、見違えるように綺麗になりました。期待を込めてキャップを戻し、レバーを引きましたが、残念ながら栓はまだ沈黙したまま。原因はもっと根深い場所にあるようです。 次なるステップは、洗面台の下のキャビネット、通称「魔の巣窟」への挑戦でした。薄暗い収納スペースの奥を覗き込むと、複雑に曲がりくねった排水管と、そこから横に伸びる金属の棒(ポップアップロッド)が目に入りました。ネットの記事によれば、この棒を外せば栓が抜けるらしい。説明通りに棒を固定しているネジを手で緩め、そっと引き抜いてみると、上から排水栓が「スポン」と抜けました。引き抜いた栓の軸部分には、キャップの比ではない、さらにおぞましい量の汚れがこびりついていました。これこそが全ての元凶だと確信した私は、再び歯ブラシを手に、執念で汚れをこそぎ落としました。部品を元通りに組み付け、祈るような気持ちでレバーを引くと、「カチッ」という懐かしい音と共に、栓はまるで何事もなかったかのようにスムーズに上がったのです。 この小さな勝利は、私に大きな達成感と、そして一つの重要な教訓を与えてくれました。家庭内の多くのトラブルは、日々のほんの少しの関心と手入れで防げるのだということ。そして、パニックにならず、原因を一つずつ冷静に探っていけば、自分の力で解決できることも少なくないのだということ。以来、我が家の洗面台の栓は、週に一度の簡単な掃除のおかげで、ご機嫌に動き続けています。