近年、防犯性の高さから多くの住宅や施設で採用されているディンプルキーですが、いざ合鍵を作ろうとすると、一般的な鍵屋さんでは断られてしまうケースが少なくありません。なぜディンプルキーの合鍵作成は難しいのでしょうか。その理由は、ディンプルキー特有の複雑な構造と、メーカーによる厳格な管理体制にあります。従来のギザギザした形状の鍵(ピンシリンダーキー)は、鍵の片側または両側の刻みの深さによってシリンダー内部のピンを一直線に揃え、解錠する仕組みです。これに対し、ディンプルキーは鍵の表面に深さや大きさ、位置が異なる複数の小さなくぼみ(ディンプル)が設けられています。このディンプルによって、シリンダー内部のピンを水平方向だけでなく、垂直方向や斜め方向にも配置し、操作します。ピンの数も多く、その組み合わせは数億通り、あるいはそれ以上にもなり、ピッキングによる不正解錠が極めて困難になっています。この複雑な構造を正確に再現するには、高精度な専用の切削機械が必要です。一般的な合鍵店に設置されている機械では、ミクロン単位の精度が要求されるディンプルの加工は難しく、もし無理に作製したとしても、鍵穴を傷つけたり、正常に動作しなかったりする可能性が高いのです。さらに、多くのディンプルキーは、その高度な技術を守るためにメーカーによって特許で保護されています。メーカーは、不正な複製を防ぐために、鍵の所有者情報を登録し、鍵番号と紐付けて管理するシステムを導入しています。合鍵の作製は、原則としてこの登録情報に基づいてメーカー自身、あるいは認定された正規代理店のみが行う仕組みになっているため、第三者が勝手に複製することはできません。これらの理由から、ディンプルキーの合鍵作成は容易ではなく、それが高い防犯性能を維持する基盤となっているのです。