防犯意識の高まりとともに、自宅の玄関などにディンプルキーを採用する家庭が増えています。ピッキングに強く、不正な合鍵作成も難しいとされるディンプルキーは、確かに安心感を与えてくれます。しかし、いざその合鍵が必要になった時、作成に時間がかかることに戸惑うかもしれません。なぜディンプルキーの合鍵作成には時間がかかり、それでも待つ価値があるのでしょうか。ディンプルキーの最大の特徴は、その複雑な構造にあります。従来の鍵がギザギザの山の高さで区別されていたのに対し、ディンプルキーは鍵の表面や側面に、様々な深さ、大きさ、角度を持つ小さなくぼみ(ディンプル)が多数配置されています。この組み合わせは数億通り、ものによっては数百億通りにもなり、これが高い防犯性能の源となっています。この極めて精密なくぼみを正確に複製するためには、一般的な鍵のコピーに使うキーマシンでは対応できません。ミクロン単位での加工が可能な、高性能な専用のコンピューター制御キーマシンと、それを使いこなす熟練した技術者のスキルが不可欠です。わずかなズレでも鍵は正常に機能しないため、作成には慎重な作業が求められ、必然的に時間がかかります。お店や鍵の種類にもよりますが、最低でも30分から1時間程度、場合によってはそれ以上かかることも珍しくありません。また、全ての合鍵店がこの高精度な機械を持っているわけではないため、対応できる店舗が限られます。信頼できる専門店を探す必要があるでしょう。さらに、メーカーによっては、より高い精度とセキュリティを確保するために、純正のキーブランク(加工前の鍵)の使用を推奨していたり、そもそもメーカーでしか合鍵を作成できない「登録制」を採用していたりする場合があります。これらの場合は、部品の取り寄せやメーカーへの発注手続きが必要となり、数日から数週間単位の時間がかかります。確かに時間はかかりますが、この時間はディンプルキーが持つ高い防犯性能を維持するために必要な工程なのです。もし精度の低い合鍵を使ってしまうと、鍵穴に引っかかったり、回らなかったりするだけでなく、鍵穴(シリンダー)自体を傷つけ、錠前全体の故障を招く恐れがあります。せっかくの高性能な鍵も、その性能を発揮できなくなってしまいます。
ディンプルキー合鍵作成時間長めでも待つ価値あり